改札を出ると、アスファルトがぐっしょりと濡れている。
見上げると東の方の空は、どんよりと雨雲がかかっていた。


「いつのまにか雨が降ってたみたいですね」

ゆきがそう言いながら、一歩を踏み出した。
水たまりをひょいひょいとよけて、ジャンプしながら歩いて行く。


拓海はその後ろからついて行った。



両手には花火の束。
夏祭りの日まで幼稚園で保管する。
子供達に花火を手渡すところを想像すると、自然と笑みがこぼれた。
やはり子供の笑顔には癒される。


午後四時前。
幼稚園には当然のことながら誰もいなかった。


鍵を開け、中に入る。
雨が降った後の湿気た匂いがした。


ゆきは正面玄関でサンダルを脱ぎ捨て、裸足のままぺたぺたと室内へと入って行った。
備品倉庫は二階にある。
二人は花火を持って階段をあがった。


ゆきの携帯の電源は切られたままだ。
今着信はどんなことになってるだろう。
そう思うと拓海は不安な気持ちにかられる。