どんどん新しいものが見えてくる。
夢の中の人が、一人の生身の男性にかわる。
身体を支える腕の強さ。
だんだんと熱くなる皮膚の温度。
額から首筋に流れ落ちる汗。
快感に眉を寄せ、下唇を噛むその表情は、抱かれる前は見えなかったもの。
結城が言った通り、奈々子はこの行為の魅力を徐々に理解しはじめている。
それ自体は本能的で動物的だけれど、この人しかいないと思わせる、絶対的な愛情行為。
押し寄せる波が、奈々子から余計な思考を奪う。
「もう、無理……」
心臓が今すぐにでも止まりそうだ。
「無理って言われて、やめると思うの?」
結城が耳元でささやく。
「まだ離さないよ」
真っ白で清潔なシーツ。
やや固めの広いベッド。
ホテルの窓は大きく、都会の明かりと青白い月がくっきりと見える。
暗闇の中、結城の身体が青白く光って見えた。
二人のうめきと息づかいだけが響く。
こんな風に夜を過ごすのは、もう何度目だろうか。
「何も考えないで。全部解放して。どんなに声をあげたって、誰にも聞こえない。俺以外には」
「でも……」
「我慢しなくていいんだ」
結城が奈々子の頬を触る。
大きくて、力強い。
奈々子は結城の腕にしがみつき、堪えきれず声をあげた。
「この顔がそそる」
結城は奈々子の唇を親指でなぞった。
「全部、俺のもの」
そして、奈々子は経験したことのない感覚に、身をよじり叫び声をあげた。