週が明けて月曜日。
幼稚園の出勤時間はとても早い。


拓海はプリントTシャツに腰履きのデニム、ブルーのスニーカーを掃き、大きめの布鞄を斜めにかける。


「いってきます」
拓海は結城の声をかけた。

「うん」
リビングから返事が聞こえた。


結城の職場はこのマンションから近いので、今頃の起床でも充分に間に合う。
朝に弱い結城は、これからきっとだらだらと支度をはじめるのだろう。


玄関を開けると、快晴。
白い雲がゆっくりと流れるのが見えた。
六階の部屋からは、都会の景色が見える。
大通りが近いため、車がたくさん走る音も、はっきりと聞こえた。


週末、考えに考えた。
ゆきになんと言うのか、そればかりを死ぬほど考えた。


そして出した答えは、正直に話して謝ること。


もう、それ以外に思いつかない。
あの夜のことを全部はっきりと覚えている振りをして、
これからゆきと、なんというか、恋人の関係になるというのは、ぴんとこなかった。


ゆきが嫌いな訳じゃない。
どちらかというとかわいいと思うし、明るくて幼稚園でも子供達に人気だ。
子供の扱いは兄弟が多かったので慣れている、と言っていた。
子供と接しているときの彼女の顔は本当に幸せそうで、天職なんだろうなと思う。



でも拓海は誰かと真剣に関係を築くことができない。



あの日から、誰とも深く接してこなかった。

表面上の友人関係はうまくいく。
投げやりになって自分を消してしまいたいと思う日は、女の子をベッドに誘って狂ったように抱いた。



でもそれだけで。
それ以上はありえない。

これからもずっと、ありえない。