「休みって、なにしていいかわかんないよな」
結城がソファに転がって、つまらなそうにつぶやく。


テレビではB級グルメ番組が流れている。


「テレビ他にないの?」
拓海は二人分の焼きそばを持ってラグに座りこむと、テーブルに置いてあったリモコンでチャンネルを変える。


「どれもこれも、つまんない」
結城が箸を手に持った。

「じゃあ、消すか」
拓海はテレビの電源を切って、リモコンをソファに放り投げた。


クーラーが効いていてとても涼しいが、窓から入る日差しは夏を感じさせる。
ベランダには二人分の洗濯物が干してある。
もう乾いているだろう。


「お盆、予定ある?」
結城が焼きそばをほおばりながら訊ねた。

「来週ちょっとだけでかけるかな。でも帰ってくるよ」

「何すんの?」
結城が訊ねる。

「仕事」
拓海は嘘をついた。


本当は、引っ越し前の、ゆきの部屋の片付けに付き合う。
すべてを知ったゆきは、拓海からお金を借りることを了承したのだ。


「お盆も仕事あるの? 大変だね」
結城が気づいている様子はない。

「結城は?」

「俺、なんもない。後半仕事に出るけど」

「ふうん」
拓海はお皿に残った焼きそばを箸で集めながら言った。


「そろそろ出る?」
結城が食べ終わり、立ち上がりながら訊ねる。


拓海は「うん」と言って、食器を持って立ち上がった。