一方、預かり所内では一人の男が掃除をしている。
20代後半から30代前半の、少し背の高いこの人
預かり所所長の佐々木杏樹。
先代から引き継いだこの店を20歳のころから切り盛りしている。
脚立に登り電球の交換に差し掛かったところで
アルバイトの女子大生が入ってくる
「おはようございます、杏樹さん」
真紀は軽くお辞儀をすると不思議そうに杏樹を見つめる
「杏樹さんが掃除なんて珍しいですね」
杏樹は少し手を止めて真紀の方を見ると満面の笑みを浮かべて言った
「今日はなんだかとってもいい気分なんだ。掃除しとくといい事がある気がするから、真紀ちゃんも手伝ってくれる?」
はぁ…、と気の抜けた返事をすると奥のスタッフルームに荷物を置きに行き準備をする。
ふと窓の外を見ると、庭の木に小鳥が止まっているのが見える。
「真紀ちゃーん、まだー?」
杏樹が呼ぶ声が聞こえて、急いで部屋からでる。
今日はほんとにいい事がありそうだ、と真紀は微笑んだ。