「ねぇ、新田くんのお兄さん、噂通り、すっごいイケメンなんだね。」



ある朝、登校すると、同じクラスの高木由里(たかぎゆり)に、いきなりそう言われた。

言われたくない言葉を、一番聞きたくない相手から聞いてしまうなんて、今日は最悪な日だ。



高木とは中学から一緒で、高校に入ってから同じクラスになるのは二回目。

こいつは、俺が密かに思いを寄せる相手でもある。



うちの兄貴は、校内ではちょっと名の知れたイケメン卒業生。

成績優秀、運動神経抜群、在校時にはバスケ部のキャプテンを務め、ミスターコンテストでは一位の座を三年間守り通した。

大学生になった今も、そのイイ男ぶりに変わりはなく、ファッション雑誌の街頭スナップに、何度となく登場していたりする。