リヒターがカルを王城へ引き入れた理由がよくわかった。

リヒターからすればカルは出会って間もない、信用できるかわからない人物であるはずだ。

それを、カルがリヒターに頼み込んだとはいえ、やすやすと王城に入れたのは、すこしでもルドリアの――ひいてはラシェルの味方を作っておきたかったのだろう。



「わかった。教えてくれてありがとう、フシル。身の回りには十分気をつけることにする。わたしも腕には自信があるから、そう簡単にやられるつもりはない」



 エルマが言うと、フシルはほっとしたように笑った。



「それを聞いて安心しました。今日からカルがエルマ様付きの近衛になります。やつにもこのことは伝えてありますので」



「それはなにより心強いな」



 言って、エルマはからからと笑った。

自分とカルが揃っていればこれまでも、これからも、怖いものなどないと思った。



「それから、エルマ様。お伝えしたいことがもう一つ」


「ん?」



 エルマが促すと、フシルは「失礼」とことわってから、エルマの髪を一房手に取った。



「わたしやあなたの持つこの緑の髪は、ヴェルフェリア大陸には存在しない髪色なのです」



 エルマは目を見開いた。「では、どこに存在するんだ?」



「このヴェルフィ・エンデの、はるか東。海を渡った先にある、ウィオン帝国をご存知ですか?」



 知っているもなにも、十日ほど前にリヒターとその話をした。エルマとカルの名前がその国の言葉に由来すると。



 エルマは黙って頷いた。