カルの言葉に、「気色悪いって、ひどい言い様だね」と笑いながら、リヒターはしかし、どこか寂しげな目をしていた。



「本当はね、利用して殺すつもりだったんだ」



「だろうな。俺もエルマも、ラグだって、そうだろうと思っていたんだ」



「へえ?」



「俺やラグは隙があればすぐにでも逃げようって話してたんだけどな。肝心のエルマが反対して、できなかった。

うまくすれば半永久的に夏市で営業する権利が得られるからって、それを逃そうとしなかった」



「エルマらしいね」



 大方、エルマは見抜いていたのだろう。

リヒターはともかく、ラシェルは彼女たちを利用して殺すようなことができない性格だということを。彼女はそこに賭けたのだ。



「兄さんは甘いから、君たちを殺すのは僕の役目だと思っていたんだけど」



 僕も、自分で思っていたよりずっと甘かったみたいだ。



 そう呟いて、リヒターは自嘲するように笑った。



「いつのまに、君たちの存在がこんなに大きくなっていたんだろうね。……僕は、ずっと兄さんだけが大切だったのに」