地下牢での一件からリヒターの処刑が決まり、そして刑が執行される今日まで、七日。
その間ずっと、エルマはリヒターが処刑されるのをなんとかできないものかと、王城内を引っ掻き回し続けていた。
苛立ちを隠せないながらも、城内の者たちに対してルドリアらしいふるまいを崩さないのは、責任感のあるエルマらしいとカルは思うが。
「まあでも、結局どうしようもなかったよ。エルマがどれだけがんばっても、な」
エルマがいくら方々に頭を下げ回ったところで、どうしようもなかった。
あれだけ大勢の目の前で王妃を刺したリヒターを、庇える者などいるはずもないのだ。
「エルマには最後まで迷惑をかけてしまったね。しかしまあ、彼女もお人好しだよねえ」
元はと言えば、脅されて仕方なしに王子妃の身代わりとなった彼女なのに、クランドル領を救われ、
ラシェルの命を救われ、挙句リヒターのために無駄に走り回らせてしまった。
そっと閉じたまぶたの裏に、エルマの笑みを思い浮かべる。
そして彼女をまっすぐに慕うメオラと、優しく見守るカルとを。
いつのまに、これほど大切になっていたんだろう。
「ねえ、カル。僕は、君たちが好きだったよ」
唐突に言ったリヒターを、カルはきょとんとした顔で見返す。
「なんだよ、いきなり。気色悪い」