呆れたような顔で言って、カルは椅子に腰かけた。



「罪人なのにずいぶん豪華な部屋だな、おい」


「だよね。みんな優しいよね」


 あはは、と、リヒターが笑う。



 処刑が決定した後、イロの采配でリヒターは牢から自室に戻された。

せめて残りの数日くらいは快適に過ごしてもらおうという、イロの配慮だ。

もちろん見張りは付けているが。



「今日、だな」



 いつものように笑みを浮かべたリヒターを見ながら、カルが言う。



――今日、リヒターの処刑が決行される。



「なんか、実感が湧かねえや。……だっておまえ、いつも通りだし」



「自分で決めたことだし、覚悟はできているからね。それより、兄さんやエルマはどう?」



「ラシェルはまだ意識が戻らない。エルマは……なんというか……」



 言葉を詰まらせたカルに、リヒターは怪訝な顔をした。



「いやに歯切れが悪いね。何かあったのかい?」



「何かあった、というわけじゃあないんだが、このところずっと気が立っている」