エルマはまずすぐ近くにいた刺客に槍を振り下ろした。


敵は剣をかかげてそれを防ぐが、エルマはすぐさまその膝を思いきり蹴り飛ばす。


敵がわずかによろけたその隙に、短槍の穂先で敵の剣を弾き飛ばし、そのまま敵の肩口を突き刺した。



 そして痛みに悲鳴を上げる敵の肩から容赦無く槍を引き抜き、振り向きざまに背後に迫っていたもう一人の刺客の剣を受け止める。



「ばかな、ルドリア姫が槍を使えるなど聞いていないぞ……!」



 エルマに弾き返された男がうめくように言った。刺客にとって「ルドリア姫」の強さはあまりに予想外だったのだろう。

エルマを囲んだ二人の刺客は、どう出るか迷うようにたじろいでいる。



 相手が動けないでいるその隙に、エルマはサッと視線を走らせて周囲の様子を伺う。



 エルマの周りには刺客が二人、そして先ほど肩を刺した男がすこし離れたところで気を失って倒れている。



 ラシェルと対峙するのは二人。

今の時点では互角に渡り合っているが、一対二はやはり厳しいのだろう。


ラシェルの息が上がっている。

おそらく、長くは互角を保てないだろう。



 ラグはカルの手当てをするメオラからできるだけ離れないようにしながら、刺客の剣戟を短剣で受け流している。

相手が一人で、その上ラグ自身が守りに徹しているためか、息は上がっていない。

むしろ対峙する刺客のほうが余裕がなさげだ。

こちらは問題ないだろう。