刺客は皆、暗い緑の装束に身を包み、頭に布を巻きつけて顔を隠していた。



「王妃の手の者か」



 相手が答えないとわかっていながら、ラシェルは言う。

刺客は案の定、一言も声を発しない。



(疫病の真実を突き止めたから、証拠をつかまれる前に消しに来たのか)



 エルマはチッと舌打ちをすると、「ラグ!」と怒鳴った。



「カルとメオラを守れ! こいつらはわたしとラシェルで片付ける!」



 ラグが守りに徹して二対六になればさらに分が悪くなるように思えるが、樹の密に立ち並ぶ山の中では、視界が悪いため味方があまり動かないほうが戦いやすい。

同士討ちの確率が減るからだ。



 それをラグもわかっているのだろう。

腰に下がった短剣を鞘から引き抜いて構える。



(ラシェルがどれくらい戦えるかわからないが、果たしてわたしにラシェルを守りながら戦えるか……)



 ラシェルをちらりと見ると、すでに長剣を抜いて構えていた。



 エルマは動こうとしない敵に意識を凝らしながら、ラグに目配せをする。

その意図を察して、ラグは素早く動くとカルの短槍を手に取り、エルマに投げた。


エルマも武器として短剣を持っているが、短槍のほうがエルマには扱いやすいのだ。



 槍を受け取るやいなや、エルマは地を蹴って目の前の敵に飛びかかる。

――それを合図に、ラシェルも動き出した。