「だが、何のために」



「そりゃまあ、」答えたのはカルだ。

「クランドル領によっぽど恨みがあったか、おまえをセダに呼び寄せるためか、じゃねえか? 圧倒的に後者のほうがありそうだと思うがな」



 その言葉に、エルマもラグも頷いた。


「やはり、王妃派の企みがあったか」


 これは、何事もなく王城に帰ることはできそうにないな。

――そう、エルマが思ったときだ。



 鬱蒼と茂る木の葉の隙間で何かが光った。



 と、同時に。



「「メオラ……!」」



 エルマとラシェルの、二人の切迫した声が辺りに響いた。

二人が動き出すより一瞬早く、カルがメオラの腕を強く引いて、その反動で自分が前へ躍り出た。



 次の瞬間、ドッと鈍い音がして、カルの右肩と左脇腹に矢が刺さった。



 カルがその場に崩れ落ちてようやく何が起きたのかを悟ったメオラが、蒼白になってカルの名を叫ぶ。

すると、その声を合図にしたかのように、樹の影や枝の上から数人の人影が現れた。



(一、二、三……六人か)



 とっさに視線をめぐらせて、エルマは敵の数を数える。

メオラは戦えず、カルも怪我をした。三対六は、かなり分が悪い。