しかし…
その曲を歌おうとする者は誰もいない。


「ちょっと…
冗談止めてよ…
誰か入れたんでしょこの曲!!」

隣りに座っていたリサが、耳を塞ぎながら下を向いた。


「も、もう止めようぜ…
こんな冗談はさ」

アキラも立ち上がって、みんなの方をキョロキョロと見回し始めた。



その時、誰かが歌い始めたのか、スピーカーから小さい声が聞こえてきた…


こんな線の細い声の持ち主は、このメンバーの中ではユキだけだ。

みんなが一斉にユキの方を向いた。


ユキは歌ってなどいないかった。
それどころか、カラオケのリモコンはまだ機械の上に置いてあるままだった!!


急激にボックス内の気温が下がり、スピーカーからは声とともに雨が降る音がし始めた…

背筋が凍り付き、足が自分の意思と関係無くガタガタと震えて止めることさえできない。


それと同時に、スピーカーから聞こえる声は徐々に大きくなり、何を言っているのか分かる様になってきた。

これは歌なんかではない…


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