屋上には涼しい風が吹いている
よくよく考えたら拓と初めて話したのは屋上だった
拓は言っていた「ここが天国に1番近い」と
確かにこの学校で1番天国に近いのは屋上だろう
あの言葉の意味
一体どうゆうことなんだろう
私は地面に座り込んだ
そのとき屋上の扉が開いた
「えっ... りか...? どうして?」
私は扉に目をやる
そこには拓が立っていた
今は授業中なはず
「拓... 正直に答えて」
私は声を振り絞った
今にも泣きそうだから
さっきのほんのちょっとの会話だけでだいたい分かってしまった
拓は何を隠してるの?
「りか? どうしたの?」
拓は心配そうに私の顔を覗きこむ
「ねぇ... 拓... 何を隠してるの?」
私は相変わらずうつむいまま
拓の返事はない
「私は拓のこと信用してるんだよ? でも拓は私に隠し事してるよね 私たちってそんなんだったの?」
私は自分の思いを吐き出した
もう止められなくなっていた
「私は拓が... 拓が好きなの!」
ついに言ってしまった
私は涙でぐしょぐしょになった顔をあげた
拓は驚いた顔をしたと思ったら優しく微笑んだ
それから私を優しく抱きしめた
地面に座っていたせいで体は冷たくなっていた
けど、拓の体の温もりでその冷たさは一切なくなった
体全体が暖かい
拓は私から体を離すと私の顔を真剣な眼差しで見つめた
「よくわかったよ りかの気持ち 僕もりかが好きだ
今から言うことは全部事実だよ」
拓は真実を語り始めた
「僕は病気なんだ... 5歳のときから」
「病気...?」
私は驚いた
拓は重い病をかかえて生きてるんだ
「そう 病名は心臓病」
私は耳を疑った
昔聞いたことがある
心臓病にかかったら長くは生きれないと
「それって治るよね? 大丈夫だよね?」
拓は黙り込んでしまった
「治らないの...?」
「治るってそう信じて生きてきた けど、10歳のとき言われたんだ 高校に行くのも難しだろうって」
私の頭は真っ白になった
「それって... じゃあ拓は」
「死ぬよ... 次に発作が起こったらね」
私は気がついたら屋上を飛び出していた
拓の話を聞いてるだけでも辛かった
視界は涙でよく見えない
拓が死ぬ...
この真実を受け入れること私にはできるのだろうか
拓の真実を知ってから私は家に帰りそまま寝てしまった
未だ信じられない真実
拓は心臓病であと1年も生きられない
こんな悲しいこと今まであっただろうか
次に拓と会ったら自分はどうするのか
拓の真実は中学生の私には受け入れがたい現実だった
私は次の日頭が真っ白なまま学校に向かった
学校につき私は机に頭を伏せた
頭がクラクラする
やっと心から好きと思える人に出会えたのに
「どうしたの? まだ風邪治んないの?」
頭の上で声がした
重い頭をあげると葵が立っていた
「いや、大丈夫大丈夫 風邪なら治ったよ」
「そっか 良かったじゃん」
葵はそうゆうと自分の席に向かった
やっぱり葵には拓の病気のことなんて言えない
とにかく今日ちゃんと拓と話さなきゃいけない
昨日逃げてしまったから
私は放課後屋上に向かった
扉を開けると拓がいた
また、寂しげな表情をしている
「た、拓...」
私は小さい声で拓を呼んだ
昨日のことを思い出して涙がでそうになる
「りか... 昨日はごめん」
拓は私の存在に気付き私のほうに近づいてきた
「いいよ 私が真実を知りたかったから」
「僕のこと嫌いになったでしょ 僕は死ぬんだよ 一緒になったってりかを悲しませるだけだよ」
拓がうつむく
私は拓の言葉にまた涙が溢れた
「拓は! 拓は私が絶対に幸せにするから!」
気がついたら私は拓に抱きついていた
「り りか...」
私の気持ちは決まっていた
好きになったときから
私は拓と一緒にいたいと
もちろんこれからもずっと拓といたかった
「拓 私ね大丈夫だから 私が最高の人生にしてあげる 拓は生きるんだよ!」
私は拓に精一杯の想いを伝えた
拓は死なない
拓は生きる
「りか... 僕はりかが好きだよ 幸せにできないかもしれないけど 初めて話したときからずっと好きだった」
拓が私を強く抱きしめ返す
まるでお互いを確かめるように
強く強く
まだ私たちは中学生
わからないことだらけだけど
それでも、私は誓った
拓と一緒に乗り越えると
今日から私たちは恋人同士
展開は早かったかもしれない
でも、初めからわかってた
私たちは結ばれる運命なのだと
でも、その試練は壮絶で苦しいものだった