それからは毎日屋上に行っては拓と話す日々を送っていた
葵も誘ったけど邪魔したら悪いからと気を使ってくれた
私は1つ気になることがあった
それは拓を探しに2組の教室に行ったとき美穂が言ってた言葉
「授業を受けてない」
私はこの言葉の意味を知りたかった
授業を受けないって拓は毎日ちゃんと学校に来てるし
授業をサボるようには見えないし
拓は何かを隠してる そんな気がする
私は思い切って聞いてみることにした
「ねぇ、拓聞きたいことがあるんだけど」
今は放課後の屋上
もう梅雨なのかな空気がジメジメしている
「どうしたの?」
拓が不思議そうな顔をして私を見る
「あ、あのね 前聞いたんだけど... 拓って授業受けてないの?」
拓は下を向いて黙っている 聞いちゃいけなかった?
「た、拓...?」
「あはは そんなわけないじゃん」
拓は下を向いていた顔をあげて大声で笑った
拓が笑ったら私もつられて笑ってしまう
「だ、だよね ごめん 変なこと聞いちゃって」
「全然気にしないで そんなことよりさ...」
何時間話しただろう
いつもたわいもない話
でも拓と話しているとどんなにつまらなくても楽しく感じる
拓は何か隠しているのか
そんなこと今はどうでも良かった
ただ拓と一緒にいたかった
今思えば気づいていたかもしれない
拓の秘密に...
「ダルイ...」
「大丈夫? 顔死んでるよ 保健室行きなよ」
次の日私は風邪をひいたみたいでダウンしていた
「ちょっと保健室行ってくる...」
私は辛さに耐えられず保健室に向かった
保健室につきドアをノックしようと手をあげた瞬間
「あと、1年ももたないかも...」
保健室から聞き覚えのある声
毎日聞いているからわかる
「拓?」
私はノックしようとしていた手を下ろした
「そうなの... 岩原さんには言わないの?」
えっ、私...
やっぱり拓なんか隠してる...?
「言いませんよ... こんなこと言ったらりかは僕から離れちゃいます」
拓の悲しそうな声
こんな悲しそうな声聞いたことない
僕から離れる... どうゆうことなの
私はわけがわからなくなり気付いたら屋上に向かって走り出していた
屋上には涼しい風が吹いている
よくよく考えたら拓と初めて話したのは屋上だった
拓は言っていた「ここが天国に1番近い」と
確かにこの学校で1番天国に近いのは屋上だろう
あの言葉の意味
一体どうゆうことなんだろう
私は地面に座り込んだ
そのとき屋上の扉が開いた
「えっ... りか...? どうして?」
私は扉に目をやる
そこには拓が立っていた
今は授業中なはず
「拓... 正直に答えて」
私は声を振り絞った
今にも泣きそうだから
さっきのほんのちょっとの会話だけでだいたい分かってしまった
拓は何を隠してるの?
「りか? どうしたの?」
拓は心配そうに私の顔を覗きこむ
「ねぇ... 拓... 何を隠してるの?」
私は相変わらずうつむいまま
拓の返事はない
「私は拓のこと信用してるんだよ? でも拓は私に隠し事してるよね 私たちってそんなんだったの?」
私は自分の思いを吐き出した
もう止められなくなっていた
「私は拓が... 拓が好きなの!」
ついに言ってしまった
私は涙でぐしょぐしょになった顔をあげた
拓は驚いた顔をしたと思ったら優しく微笑んだ
それから私を優しく抱きしめた
地面に座っていたせいで体は冷たくなっていた
けど、拓の体の温もりでその冷たさは一切なくなった
体全体が暖かい
拓は私から体を離すと私の顔を真剣な眼差しで見つめた
「よくわかったよ りかの気持ち 僕もりかが好きだ
今から言うことは全部事実だよ」
拓は真実を語り始めた
「僕は病気なんだ... 5歳のときから」
「病気...?」
私は驚いた
拓は重い病をかかえて生きてるんだ
「そう 病名は心臓病」
私は耳を疑った
昔聞いたことがある
心臓病にかかったら長くは生きれないと
「それって治るよね? 大丈夫だよね?」
拓は黙り込んでしまった
「治らないの...?」
「治るってそう信じて生きてきた けど、10歳のとき言われたんだ 高校に行くのも難しだろうって」
私の頭は真っ白になった
「それって... じゃあ拓は」
「死ぬよ... 次に発作が起こったらね」
私は気がついたら屋上を飛び出していた
拓の話を聞いてるだけでも辛かった
視界は涙でよく見えない
拓が死ぬ...
この真実を受け入れること私にはできるのだろうか
拓の真実を知ってから私は家に帰りそまま寝てしまった
未だ信じられない真実
拓は心臓病であと1年も生きられない
こんな悲しいこと今まであっただろうか
次に拓と会ったら自分はどうするのか
拓の真実は中学生の私には受け入れがたい現実だった
私は次の日頭が真っ白なまま学校に向かった
学校につき私は机に頭を伏せた
頭がクラクラする
やっと心から好きと思える人に出会えたのに
「どうしたの? まだ風邪治んないの?」
頭の上で声がした
重い頭をあげると葵が立っていた
「いや、大丈夫大丈夫 風邪なら治ったよ」
「そっか 良かったじゃん」
葵はそうゆうと自分の席に向かった
やっぱり葵には拓の病気のことなんて言えない
とにかく今日ちゃんと拓と話さなきゃいけない
昨日逃げてしまったから
私は放課後屋上に向かった