ありがとう... 〜大切な君へ〜

「こ、恋!?」

「ちょ、葵声でかい」

私は次の日昨日の拓との出会いを葵に話していた

もちろんこの気持ちも...

「その子って転校してきた子でしょ?イケメンとは聞いてたけど」

「たまたま屋上に行ったらいたの 恋かはまだわからないけど」

「でも、ドキドキするんでしょ?」

「まぁ、まぁね...」

「よし! ならアタックだ!!」

「えっ、ちょっと」

葵は強引に私の腕を引っ張った

「ほら、行くよ」

葵は私の腕を引っ張りながら教室を出た
「橋本くんって何組?」

「そういえば知らないや」

「うーん... よし、直感で2組だ」

葵は私たちのクラスの隣のクラスのドアを開けた

教室には女子たちが雑談をしていた

今は昼休み

男子たちは廊下で走り回ってる

教室を見たところ拓の姿はない

「葵にりかじゃん どうしたの?」

私たちに声をかけてきたのは前同じクラスだった美穂だった

「あ、美穂 橋本くんってこのクラス?」

「うん そうだけど 今はいないね いつも授業受けてないし」

授業を受けてない...?

私は美穂の言葉に疑問を覚えた

「そうなんだ ありがとう」

私たちは教室を出た

「橋本くん、授業受けてないってどうゆうこと?」

「わかんないよ...」

「まさか、不良じゃ...」

「ないない 絶対ないよ」

一体どうゆうことなんだろう

私は1日中その言葉の意味を考えていた
この日拓と会うことはなかった

屋上にも行ったけどいなかった

「まぁ、今日は休みだったんだよ」

私たちはいつもの通学路を歩いていた

「そうなのかな... やっぱりこれって...」

葵はにやっとしながら言った

「恋だね」

「やっぱり」

「まぁ、ゆっくり考えればいいんじゃない 初めて話したばっかだしさ 慎重にね」

葵は私にピースサインをした

「ありがとう 頑張ってみようかな」

私は恋をした

まだ、彼のことは良く分からないけど...

これからゆっくり分かっていけたらいいな...

この日から私は拓を好きになったんだ
私は毎日屋上に行く毎日が続いた

でも、拓の姿はなかった

拓の担任の先生に聞くとあまり体調が良くないらしい

「はぁー」

私は大きなため息をつく

「ため息ついたら幸せ逃げちゃうよ」

葵が私の机に頬杖をつきながら言った

「でも、もう1週間だよ? 風邪ってそんなに続く?」

「確かにね...」

拓と初めて話した日からもう1週間が経っていた

たった1日だけ話しただけ

それなのに好きとか私って単純なのかなぁ...

「まぁ、明日には来るよ ねぇ?」

葵が私にとびきりの笑顔を向けた

「うん ありがとう 待ってみるよ」

もう、待つしかない

そう強く思った
そして次の日

私はいつもどおり周りに誰かいないか確認して扉を開けた

今は昼休み

4階には誰もいないはず...

「こら! 何やってる!」

「えっ...」

いた... 誰もいないはずなのに

しかもよりによってあの番長先生

学校1怖いということであだ名は番長

「ばっ、番長先生」

「その呼び方やめろ 屋上は立ち入り禁止だぞ」

「いや、その...」

「言い訳はいい 生徒指導室に来い!」

私の耳には先生の怒鳴り声

うるさいなんて言えるはずない

もう、終わった... と思ったそのとき

「あっ、すいません先生」
聞き覚えのある声にハッとした

後ろを見ると久しぶりに見る整った顔立ち

「た、拓!」

そう、私の後ろには拓が立っていた

「橋本 お前どうして屋上に?」

「外の空気が吸いたくて 1人じゃ寂しいから岩原さんに来てもらったんです」

私は拓が言ってる意味が良く分からない

「そうだったのか なら仕方ないな 岩原悪かったな」

先生はそう言うと階段を下りていった

私は相変わらず理解できない

拓も立ち入り禁止の屋上に入っていたのに

何も言われなかった
「良かった 久しぶりだね」

「そ、そうだね あっ、助けてくれてありがとう」

「いいよ 僕こそごめん なかなか学校来れなくて」

「ううん 大丈夫だよ」

それから私たちは1週間分の話をした

拓はお葬式と風邪が重なってしまい仕方なく1週間休むことになったらしい

私はあえてさっき思ったことは聞かなかった

どうゆうことなのか知りたかったけど

そんなことより今は拓と話していたかった

今日久しぶりに会って話して改めて分かった

私は拓が好きなんだと



それからは毎日屋上に行っては拓と話す日々を送っていた

葵も誘ったけど邪魔したら悪いからと気を使ってくれた

私は1つ気になることがあった

それは拓を探しに2組の教室に行ったとき美穂が言ってた言葉

「授業を受けてない」

私はこの言葉の意味を知りたかった

授業を受けないって拓は毎日ちゃんと学校に来てるし

授業をサボるようには見えないし

拓は何かを隠してる そんな気がする

私は思い切って聞いてみることにした

「ねぇ、拓聞きたいことがあるんだけど」

今は放課後の屋上

もう梅雨なのかな空気がジメジメしている

「どうしたの?」

拓が不思議そうな顔をして私を見る

「あ、あのね 前聞いたんだけど... 拓って授業受けてないの?」

拓は下を向いて黙っている 聞いちゃいけなかった?

「た、拓...?」

「あはは そんなわけないじゃん」

拓は下を向いていた顔をあげて大声で笑った

拓が笑ったら私もつられて笑ってしまう

「だ、だよね ごめん 変なこと聞いちゃって」

「全然気にしないで そんなことよりさ...」

何時間話しただろう

いつもたわいもない話

でも拓と話しているとどんなにつまらなくても楽しく感じる

拓は何か隠しているのか

そんなこと今はどうでも良かった

ただ拓と一緒にいたかった

今思えば気づいていたかもしれない

拓の秘密に...