いつからだろう
偽った笑顔で笑うようになったのは
相手に深く入り込むのに億劫になったのは
相手の表情を伺いながら会話するようになったのは
素の自分をさらけ出していた中学校生活
そんな自分など要らないって実感した
私なんか存在している価値などないって
日を重ねていくたび、自分の心に傷がついた
だから…
私は…
偽りの姿でこの世に存在しようと
中学生最後の日
心の奥でそう誓った
今日も同じ様に偽りの姿で1日を過ごす
なぜ偽るか
そっちの方が都合が良いし、楽なんだもん
素をさらけ出して、自分の性格が嫌われやすいか、好かれやすいか
そんな大きな賭をするような根性なんか無い
そんな賭をするなら
皆から好かれる良い子ちゃんでいてたほうが絶対楽
だから、美雷は今日も偽るの
「みぃちゃん!」
みぃちゃんと私を呼ぶこの声は優だ
平松 優
美雷が唯一素をさらけ出している親友
中学校生活で何があったのかも全部知っている
私の数少ない大事な友達
「優、おはよう」
笑顔で返事をする
この笑顔も優だけに向けられる素の笑い方
「おはよぅ。スッゴく眠たい」
「うん。美雷も眠たい」
こんな他愛の無い会話を学校への行き道、ひたすら続ける
「昨日ね、まぁくんと遊んでね…」
まぁくんとは優の彼氏
1つ上の先輩なんだ
他校だからなかなか会えないみたいだけど
「優は彼氏いてて良いね、羨ましいわ。美雷も彼氏ほしーい」
「みぃちゃんモテるのに…。運命の王子様はまだ現れないの?」
「運命どころか、ぜんっぜんカッコいい男と出会さないのよ」
彼氏か…
もぅ、ずっといてないな
彼氏も裏切るもんね
ずっと美雷と居てくれないもんね
嫌な過去が蘇りかけた
ぶんぶんと頭を振り払う
「みぃちゃん、又思い出した?」
「ん?大丈夫だよ!気にしないで」
「みぃちゃんが大丈夫って言うなら…。ところで、みぃちゃん。入学して1ヶ月たったけど何人に告白された?」
「えーっと…。12人くらい?」
「嘘!12人!やっぱりみぃちゃんモテるね」
「この自分になってからわね…」
「やっぱり、私は素のみぃちゃんの方が好きだな」
一気に優の表情が暗くなる
「優がそんなしょげること無いの!今の方が楽だしね。もぅ、前みたいな思いしなくて済むから。大丈夫!」
「本当に大丈夫?」
「全然大丈夫!」とピースしてみせる。
本当はつらいよ。
でも、今幸せな優に迷惑とかかけたくない。
優を教室に押し込むと、美雷は自分の教室に向かった。
ガラガラッ
「美雷ちゃんおはよう!」
「みぃちゃんおはよう!」
次々に男子が声をかけてくる。
「おはよう」
美雷は少し微笑みながら、皆に返事を返した