遥(はる)side

『ごめん。俺、相沢(あいざわ)さんの事好きじゃないんだ』

中学二年生のクリスマスイブ。
私は告白を断られた。当時、同じクラスだった宮本(みやもと)くんに私は呆気なく振られた。
忘れられない程、苦い思い出になったこの日のクリスマスイブ。

中学三年生になり、違うクラスになったけれど、私達の距離は元通りになる事はもうなかった。目が合えばフイッと逸らされる。彼の冷たい目は私の心を引き裂いた。
まぁ、伝えた私が悪いんだろうけど。

─────
「遥(はる)ー?」
「遥ちゃん?」

モノクロの世界に誰かの声が響く。少し面倒臭いと思ったけど、ゆっくり目を開いてみた。

私の視界に広がったのは温かい春の日差し。けれどそれは、針の様に私のデカ眼鏡に突き刺さる。
まぶし過ぎて思わず「うっ」と声を漏らした。

「ったく、いくら暖かいからって、部室で寝たら風邪ひくぞ?」
「そうだよー!この部室、寒いんだから!」
意識がまだはっきりしていない頭に、親友達の声が響く。
あれ…?此処…何処?

「あ…れ…?私………」
「遥ちゃん、うち等が職員室に行ってる間に寝ちゃってたんだよ?カメラ持ったまま!」
手元に目を移すと、カメラが私の手に納まっていた。
あー…、手が重たいな~と思ったのはそのせいか。何で寝ちゃってたんたんだろう。
電源を点けると、撮ったばかりの風景がカメラに映る。やっぱり春は綺麗な風景が沢山撮れるなー。

「で、で、イイ写真は撮れたのか?!」
「うん。撮れた」
私が答えると、祈は子どもみたいに無邪気な笑顔で「見せて!見せて!」と跳び跳ねる。

「いいよ。はい」
カメラを手渡すと菜結もカメラを覗きこむ。
二人共、凛とした表情で私が撮った写真を見てくれる。少し、恥ずかしいな…人に自分の自信作を見せるのは。
「…すごいよ!遥ちゃん!」
「遥、すげー!この写真、凄い綺麗!」
祈が指差したのは去年の春、数少ない友達の一人と出掛けた菜の花畑の写真だった。辺り一面に黄色の絨毯が広がっていた。