「~♪」 私の歌声に被せて、悠陽も歌いだす。 この空間にだけ響く、歌い声。 向かい合って微笑みあいながら歌う、この瞬間が、 左手を包み込む、温かくて大きな手が、 とても、いとおしい。 「ねぇ、佐海」 「うん?」 「やっぱり…さっきの、本気だから」 さっきの? 「何のこと?」 思い出せなくて、素直に訊いてみる。