ん?…その前に、
「聞こえてたの?」
「ん。無意識に呟いてたみたいだね」
可愛いなぁ、なんて言って笑う。
「え…と、遠慮しておきます」
「あ、振られた」
愉しそうに肩を揺らす悠陽。
その姿に、少しだけ、胸の奥がギュッと苦しくなった。
「悠陽。そんなプロポーズ紛いのこと、色んなひとに簡単に言っちゃ駄目だよ?
勘違いする人もいると思うから」
言いながら、もう一度外に視線を移す。
だけど、窓ガラスがくもって景色が見えない。
どうしても見たくて、窓を拭いた。
「佐海。素手で拭いたら駄目だよ。冷えるだろ?」
左手が、悠陽の両手に包まれる。
…温かいな。
手だけじゃなく、心の中もほっこりする。
「~♪」
自然と口から出てくる、大好きな歌。
子供のころ、二人で一緒につくった大切なもの。