「でも僕は、春のほうが好きだな」



「そうなの?」



「うん。だって冬は寒すぎるからね」



そっか。それも一理あるかも。



二人ならんで外を眺める。



この放課後の穏やかな時間が、とても好きだと思う。



家にいるより落ち着くし、何より思いっきり歌えるから、気に入ってる。



ここは同志であり幼馴染みの、悠陽の家。



ピアノの他に、ギターやトランペット、さらにはドラムまで揃っている。



…羨ましいなぁ、この部屋。



毎回、そんなことを思わずにはいられない。



「ははっ。じゃあ、家に来ればいいよ。僕がもらってあげる」



「…?」



もらう……………え、?



一呼吸おいて理解した、その言葉の意味。



目を見開いて彼を見上げる。