まだ暑さの残る九月中旬。
練習に参加することは出来ないものの見学だけでもしようと、俺は部活に顔を出した。俺が動き回れないのをいいことに、ふざけて俺を挑発しようとする奴や心配してくれる奴。部員の反応は様々だった。
そんな部活から返ってきた俺は、見るだけとは言え久しぶりに参加する部活の雰囲気や部員との絡みがあったのだ。その上、学校までの往復で慣れない松葉杖を使っていたため酷く疲れていた。俺は今すぐベットに倒れこみたいのを抑えて、喉の乾きを満たそうとキッチンへと向かった。
冷蔵庫から麦茶を取り出し一杯飲んだあと、ふとテーブルに目を向けると一通の手紙が置いてあった。普段なら母さん宛のものがほとんどで気にもならなかっただろう。しかし、これは違った。可愛らしいピンクの封筒には自分の名前が記されていたのだ。
自分宛に手紙が来ることなど、今までに数えるほどしかない俺は不審に思い、誰からやろ…、そう嘆いて手紙の差出人を確認した。
すると、その手紙には
−楠本 雅−
と彼女自身のように、女の子らしい柔らかく丁寧な文字で記されていた。
文字を見るだけで俺の心の中には温かくて懐かしい、でも苦しく胸を締め付けるような想いが蘇った。
そう、俺たちが出会ったのは今から二ヶ月前のこと。