その日、朝食時に母と弟に内定の話をした。
会社名やどんなところかは言わなかった。
もちろん給料のコトも言っていない。
岐阜県に本社があるとだけいっておいた。
母も弟ともおめでとうと祝福してくれた。
僕は素直に喜べなかった。事業内容もよく分からないところだったからだ。
そこから卒業まではあっというまだった。
内定をもらったせいか、僕は就活のやる気を奪われ、そのままグランドクロスに入社する事にしてしまった。
最悪の場合、初任給もらってやめて、また別のところ探せばいいのだからという考えもあった。
卒業式も、なぜかあっけなく終わり。
他の人達はサークルの飲み会など、イベントがあるそうだが、特に友人もいない僕は帰宅するしかなかったのだった。
いよいよ訳の分からない企業で働くわけだ。
希望も期待もなかった。
僕はただ二兆円という数字に誘われただけなのかもしれない。
そんな複雑な気持ちのまま、入社日を迎えて僕は岐阜へ旅立つのだった。