「うん。だって、今日は特別な日でしょう?」

にっこりと笑うその顔は医者というより、一人の女性そのものだ

「特別な日は特別に迎えたいものだもの。だから今日体もきれいにしたし、爪も切ったし、髪も切ったついでにちょっとアレンジしてみたんだ」

可愛いでしょ?

そう言って微笑む彼女につられて再びベッドに視線を送ると

「ホントだ」

切りそろえられた髪が少しカールしている

結衣が好きそうな髪型だ

そう思って、彼女たちの気遣いに温かな気持ちになる

「花瓶、そこに置いておいたから。使ってね」

ベッドの横にある棚の上に品のいい花瓶が一つ置いてある

今日北河がスズランを買ってくることを見越して用意していてくれたらしい

「いつまでいても構わないけど、一応帰るときは声かけて下さいね」

そう言って出ていこうとする彼女にお礼を言おうとすると

「あ、そうだ。知ってます?結衣さん、北河さん来るとね、すーごくうれしそうなのよ。わかるのねーってみんなで言ってたんだ」

くるっと振り返って笑顔を向けてくる

「わかるんですか?」

眠っている結衣はいつだって眠ったままだ