「久々だね。喧嘩したの」

「ああ。…でも、なんかすっきりしたな」

ふ、と笑いかける彼の表情に思わず見とれてしまう

余り笑わない彼の時々の笑顔

それが大好きだ

「結衣が大笑いしたのも久々だな」

うれしそうに笑いかけて指摘され、

「そう、かな?」

と、ここ数か月を思い返す

そういえば、こんな風におなかを抱えて笑っていなかったかもしれない

元に戻ろうと、早く速くとそれだけに必死で

自分を大切に想っていてくれる周囲の人も視えなくなっていたのかもしれない

自分はこんなにもたくさんの人に大切にされているというのに

「ねえ、裕君」

そっと呼びかける懐かしい彼女の声に、ふ、と瞳を無意識に細めながら視線を合わせる

「今度さ、車椅子、押してね」