そろそろ北河が来る時間だ、とちらちらと時計に視線を送っていると

静かに、ゆっくりとドアが開く

本当は面会時間外で追い出されるはずなのだけれど、あの女医さんたちが気を利かせてくれたせいか

彼だけはいつも時間外にひょっこり現れる

「……」

流れる沈黙に、お互いに口を開くタイミングを失う

ギ、と重苦しい音を立てて、北河の背後でドアが閉まる

その後に訪れるのは、文字通りの静寂

こんな重い雰囲気は、いつ振りだろう

付き合い始めのころにした小もない大喧嘩の後以来だろうか

「結衣」

口を開いたのは、結局北河だった

それもほんの数秒の違いだけで、今まさに結衣も口を開こうとしていた

そのことがうれしくて、おかしくて

我慢できずにふ、と吹き出す