「フランスだったかな、スズランを大切な人に贈りあうのは」

「ええ、5月1日に。スズランをもらった人には幸福が訪れるって言われてるんです」

満足そうな笑みを宿す北河に女医もつられて微笑む

「じゃあ、いつかきっと結衣さんは戻ってくるわね」

だってこんなに願ってる人がいるんだもの

「…はい」

スズランを見つめながら、はっきりと北河が頷く

その表情は昨日より少し明るい

そのことに北河に気が付かれないようにそっと微笑む

「花瓶必要でしょ?探してくるから先に結衣さんのところ行ってて」

「ありがとうございます」

たとえどんなに時が過ぎようとも

この想いがある限りそばにいよう

隣で笑っていてくれることが何より幸せだから

その声を聞けることが、何より安らげるから

たとえ、この先どんなことが待っていようとも

必ず支えてみせる