次の日



「あら、北河さん、こんにちは」

再び病院を訪れると結衣の担当女医が微笑みかけてきた

「こんにちは」

「それは?」

北河の手に抱えられた小さな花束を不思議そうに見つめる女医

「スズランです」

「スズラン?」

透き通ったブラウンの瞳が少し大きくなる

「ええ。結衣が大好きだったんです。記念日とか誕生日とかには必ず贈りあっていたんですけど、この間の二周年記念日分をまだだったので」

少し遅くなってしまったけれど

そう話す北河の瞳は優しい

「スズランって確か幸福の再来とかっていう花言葉だったわよね」

「知ってるんですか」

「もちろん。女のたしなみよ、って言うのは嘘だけど。花言葉とか結構好きなのよね」

微笑む女医は、いつもの凛とした雰囲気ではなく、少女のようだ