見慣れない着信番号

首をひねりながらも通話ボタンを押して耳に電話を当てる

「はい、………え?」

つむがれた言葉に世界が止まった気がした

一切の音も色も何も感じなくて視えなくて

ただ、必死に結衣の運ばれた病院に急いだのを覚えている

信号でタクシーが止まる度に

結衣が遠くにってしまうのではないかとはらはらした

そんなことをしている間に結衣が、

届かないどこかへ行ってしまうのではないかと

握りしめたこぶしは感覚がなくなっていた

病院の前に止まったタクシーからお釣りを受け取らずに飛び出し、

北河に反応してゆっくりを開く自動ドアをすり抜けて行った先には

何度か会ったことのある結衣の両親が沈痛な顔で座っていた

真っ赤に光る「手術中」の文字

嘘だと思いたかったことが、その文字に一気に現実へとすり替わる