「…一年半前、突然事故に会って昏睡状態になったんだ」

ゆっくりとかみしめるように言葉をつむぐ北河は、とてもつらそうに見えた

「目が覚める可能性ってあるんですか」

「…無くはない。でもいつになるかは誰にもわからない」

「それでも待つんですか?いつ目覚めるかわからないのに?」

ゆっくりと北河の首が縦に動く

「…っ。おかしいですよ、いつ帰ってくるかもわからない人を待つとか。その人と婚約してたわけじゃないんでしょう?なのに、ずっと待つんですか?それで北河さんは幸せなんですか」

奈々絵の言葉にすぐには頷けない自分が居た

幸せか、そう問われれば、

わからない

それが答えだ

でも、

「後悔はしたくないんだ。今彼女のそばを離れれば確実に後悔する。だから、ごめん。今は答えられない」

北河の言葉に奈々絵の瞳から涙があふれる

大きな瞳がみるみるうちににじんでいく