「北河さん」

昼休み、特等席に座ってぼんやりとしていたら頭上から声がかかる

顔を上げるとお弁当を持った奈々絵がいた

「ここ、いいですか」

北河の向かい側の席を指さしながらそっと尋ねてくる

「どうぞ」

北河の答えに嬉しそうにほほ笑む彼女に少し胸が痛む

「北河さんって休日とか何してるんですか」

嫌味なく聞けるのは奈々絵の才能の一つだと思う

「んー、そこらへんぶらぶらしたり、家でのんびりしたり…かな」

あとは結衣の病室を訪れるくらいだ

「今度映画とか一緒にどうですか」

「映画?」

「あ、はい。でも、嫌ならいいんです。ただ見たいのがあって、でも一人で映画って苦手で」

だからどうかなって

勇気を出して言ってきたのだろうことがありありと伝わってきて、

そろそろ奈々絵に対してもはっきりしなければ

という思いが強くなる