「いくらなんでも花束だけじゃなって思って。でも裕君の好みってまだよくわかんないからさ、就職祝い?も兼ねて」

っていってももう就職して2か月目だけど

「ありがとう」

スズランの花束を横に置いてそっと箱の包みを解く北河を隣で結衣が見つめる

「時計?」

「うん。これならスーツにも合うかなって」

へへへと照れくさそうに微笑む結衣を愛おしく感じる

初めて二人で迎えた誕生日、スズランの意味を知った日

それから誕生日や記念日にスズランを贈りあうのが習慣になった

小さくて白い花は大きな花束より、少しの花束の方が見た目もかわいい

だからいつも少しだけれど、でも約束のようにスズランを贈りあった

大切な人への気持ちの表れとして

そして、あの日結衣に貰った時計は、今も北河の腕にはまっている

少しも狂わずに時を刻みながら

戻れはしない時を想わせながら