「先生の彼氏、ですか」

「そう。唯一違うとしたらあいつの方が隠すのがうまいことかしら。すっこしもね、頼ってくれないの。ひどいと思わない?」

むくれて同意を求める彼女に思わず笑いながら、「そうですね」と返す

瞬間、彼女が満足そうに笑みを宿す

「そうやって笑っていて。そしたらきっと結衣さんも帰ってくるから」

「……それは、医者として、ですか」

「いいえ。一人の人間として、女としての言葉。医者だって人間よ。信じていれば叶うって思うの、だから私は信じてる。結衣さんがいつかあなたのところに帰ってくることを」

ふわりと吹く風が髪をもてあそんでいく

こういう発言が結衣を思わせて少し切なくなる

「なーんてね。あんまり北河さんを留めるようなこと言っちゃいけないんだけどねー」

一変、おどけた様に遠くを眺める彼女に、そっと小さく笑みを宿す

「でもね、永遠の愛ってちょっと信じてみたいと思わない?」

「意外とロマンチストですね、先生」

「意外とは余計ー」

小さくほほを膨らませる彼女の言葉に二人で笑いあう

時頼吹く風はいつも穏やかだ

きっと大丈夫

こうして支えてくれる人がいるのなら

自分と結衣の未来を信じてくれている人がいるのなら

まだ、大丈夫