風が吹き抜けていく

心地いい風が嫌味なほどだ

でもこれくらいの方がもやもやとすっきりしない北河にはちょうどいいのかもしれない

「あら、先客」

ふーと息をつきながら手に持った缶コーヒーを口に含んでいると、

背後でドアが開く音とともに知った声が風にの手届く

「先生」

白衣姿のその女医は、結衣の担当だ

すらりとした長身に真っ白な白衣がよく似合う

年も27と北河と大して変わらないため、

医者というより医療の知識がある良き相談相手という認識に近い

「ダメだよー。ため息ついちゃ。幸せが逃げちゃう」

冗談っぽく言いながら北河の隣に並ぶ

その間には人が一人入れるくらいのスペースがある

「今日結衣さんがうれしそうな顔してたから北河さん来たのかなーって思ってたの。どんぴしゃね」

嬉しそうにほほ笑む顔は少女のような純粋さがある