「しかし、拓海、着くの早過ぎ。
何キロで走って来たのさ?」

松原くんが苦笑いをする。

「…言えない」

拓海くんも苦笑いをして私の額にキスをした。

「じゃ、俺、お邪魔だから帰るよ。
また明日」

「うん、ありがとな!」

拓海くんは立ち去る松原くんに片手を上げた。



「…真由ちゃん、大丈夫?」

辺りは完全に暗くなり、この路地裏も表通りの明かりが少し入ってくるくらいだった。

「うん…拓海くん、ゴメン」

私はまた、泣いてしまった。

こんな事は初めてで。

足がまだ震えている。

「怖かったよぉ…」

私は拓海くんにしがみついた。

拓海くんも私をギュッと抱きしめる。

「もう二度と、こんな目には合わせないから。
出来るだけ一緒に帰ろう?」

拓海くんは私の唇にキスをした。

私も頷く。



「他の人から誘われてもついて行かないで。
僕だけを見ててよ」

その囁きが。

たまらなかった。

顔を上げるのが恥ずかしかったから、しばらく拓海くんの胸に顔を埋めた。