-イブ当日-








いつもの勤務体制より一人足りないけど、結構外泊する患者さんもいるからそんなに忙しくないみたいでよかった。





「休憩入りま~す」
「南さんちょっと~」
「は~い?」






帰り支度の先輩ナースに呼ばれる。今休憩取ってから朝まで婦長と二人。明けたら夜まで頑張ってあとは龍くんとクリスマスが過ごせる。
プレゼント、色々考えた。でも比較的何でも持ってる龍くんに私が上げれるのってなんだろ……ずーっと考えてたけどある事を思い付き決心した。ドキドキだけど明日はきっと特別な日になるだろう。









「明日の夜、私と夜勤交替して欲しいの」
「え………?」








耳を疑った。今なんて?







「私今晩彼の都合で約束ダメになっちゃって。変わりに明日に変更されちゃったの」








すがるような目で顔の前で両手を合わせてる先輩ナース。


だって…だって私も約束が。






「こんなことフリーの南さんにしか頼めないから」








私も彼……いるんですよ?約束してるんですよ?二回も約束破る事なんかできないよ。






「じゃお願いね!婦長には言っておくから」
「えっ、あの…ちょっと!」








どうしよう。どうしよう。心臓がバクバクする……これが原因で喧嘩になっちゃったりしたら。




フラフラと院外に出た。震える手で携帯を取り出す。かける先は龍くんじゃなく…自分でもわからないけど何故か璃乃さんだった。





『もしもし?』




聞き慣れた鈴の鳴るような可愛い声に涙が込み上げてきた。



『もしもし?南ちゃん?どうしたの!?泣いてるじゃない』



電話口の向こうで『何?誰?』と落ち着いた男性の声。きっと璃乃さんの彼氏。きっと今頃彼とディナーだったんだ。邪魔しちゃった。




「あ、間違えましたぁ。璃乃さんごめんなしゃい!」