直ちゃんの隣に座って、麦茶を一気に飲み干す。
「課題は進んでんのか?」
「…ま、まぁ…何とか」
「難しかったら言えよ。俺も教えるからよ」
「ありがとう…」
優しさを見せた直ちゃんに見つめられて、照れ臭くなって顔を逸らすと。
「良いねぇ、青春だねぇ…へへへ」
お父さんの幸せそうなデレデレした顔があった。我が父ながらちょっと引いてしまうくらいの。
直ちゃんとの付き合いを反対されるよりは断然良いけれど、心配されないのもいかがなものか。
「てかなんでシャツ羽織ってんだ?クーラー効いてるけど、暑くね?」
「だってカテキョの先生いるし…それにほら、日焼け」
「うわ、赤いじゃん。大丈夫か?」
「日焼け止め塗ったんだろう?」
お父さんも軽く眉を寄せて聞いてきた。
「そうなんだけど…あ、」
「お前は親御さんの前で彼女の肌を直接触るほど無神経だったのか」
冷たい口調で現れたのはスラッとした綺麗な顔のお兄さん。背は直ちゃんより少し高いくらい。銀のフレームの眼鏡がよく似合ってた。
「ちっっげぇよっ!ただ日「千幸くんの今の勉強のレベルはだいたいわかりました」って聞けよっ」
喚く直ちゃんをよそにその人はお父さんにそう言った。
後ろには千幸が居て、姉ちゃんお帰り、と笑う。
「ありがとう。そうそう、この子が千幸の姉の千華。聞いてるだろうけど直斗くんのお嫁さん」
「えっ!?」
「千華を絶対幸せにしますお父さんっ」
「ええっ!?」
とんでもない発言をする二人に驚く。きっとイタズラ好きなお父さんと意地悪な直ちゃんだから、半分アタシをからかってるんだろう。
でも、人前でやらなくたって!
「はじめまして。河内義尚(こうちよしたか)です」
「は、はじめまして千華です!お世話になりますっ」
優しく微笑んで挨拶をする姿は、さっきの直ちゃんへの態度とは大違いだった。
なんだか、とても大人びて見えた。
(まぁ実際年上だけど…直ちゃんが少し子供っぽいせいかしら)
「とりあえず、皆座ろうか。今麦茶とお菓子用意するから。千華、手伝ってくれるか」
「あ、はぁい」