「…綺麗になったわね…」
「ふぇ?」
「あんたのことよ、千代。幸せなのねー御山くんとお熱いのねー」
「ちょ、お熱いって何っ!?」
一気に真っ赤になる親友が可愛くってクスリと笑えば、彼女は頬を膨らませた。
そんな彼女は一ヶ月ほど前に彼氏が出来た。
だから、綺麗になったのだ、彼女は。
見た目はもちろん、かもし出すオーラというか雰囲気が随分女の子らしくなったというか。相変わらず素っぴんだし身なりや持ち物は変わらないけどね。
でも、それがこの子の良いところだと思う。
(…アタシは、変わったのかな?)
ふと、そんなことを考えた夏休み序盤。アタシは千代と宿題に励んでいる最中だった。
うん、我ながら真面目。
「千華?さっきからぼーっとしてるけど大丈夫?」
「…大丈夫じゃない、ココ解んない」
「じゃあそれ解けたら休憩しよっか」
笑う千代はちょっと大人びて見えて、いつもは妹のように思っていた彼女も、やはり恋をして多少なりとも変化があったんだな、と感じた。
まあ、勉強面に関しては常に千代の方が姉のようだけど…。