「今からこのなんの変哲もない手錠を、朝壬さんにかけてもらいます」


そう言って私は手錠をかけてもらう。


手錠を動かす音だけが聞こえる体育館。



ふと観客の方を見る。


白川さんと目が合った。



彼女の目は私を睨んでいた。


それも今だけじゃないって思わせるような目つきだった。



「かけたよ」


朝壬さんの言葉も耳に入らず、動揺してしまう。


「加奈ちゃん?」



「あ、ありがとう」


朝壬さんを見て、一旦落ち着く。


そしてマジックの説明を始めた。




「この手錠のかかった手は、ろくに動かすことができない状態となりました。



そんな手を水の入った桶の中に入れます」



一回手が動かしにくい状態を作って、手を見ずに浸けた。



「朝壬さん、さっきの黒い布を持ってきて」



そう言うと朝壬さんは、とことこ持ってきてくれる。



「この前に布を下ろして、みんなに見えないようにして」