「では加奈ちゃん、ここにあるもので何かできるマジックはないでしょうか!!?」
新山さんがみんなに聞こえるように、質問する。
これも演出なのであろう。
存分に練習してない私は、やり方とかうろ覚え。
ここに来る前に一度、やり方を確認しとけばよかった。
見ている人みんなが期待している中、私はそれを裏切ってはいけない。
不安を抱え私はお客さんの方向を向き、マジックを始めた。
緊張は高まる一方。
自分でも手が震えているのが分かる。
「すると…この机の上にあった赤い箱が消えるのです!!」
そう言って前にかけておいた黒い布を、みんなの視界から消すようにした。
しかし、机の上にある箱は消えてなかった。
みんなの前で失敗してしまった。
消えてない箱の存在に、観客席から笑いが起こる。
クラスメートからも不安な眼差しが向けられる。
そこではっと思いついた。
「ねぇ!! マジックの一式を置いてるダンボール、今どこにある?!」