田中を置いて静岡へ帰る新幹線の中で、僕は後悔した。

何をしているんだろう。
無理矢理でも連れ帰ればよかった。
怒鳴って帰ってしまっては、田中は帰ってこない。
そんなの当たり前なのに。

次こそはちゃんと説得してなくては。
決意をし、静岡についた頃、飯間から電話がなった。

「もしもし。」

「借金返済の件でお電話させていただきました。名古屋で田中さんに会えましたか？」

それは飯間の声ではなく、借金取りからだった。
「なぜそれを？それになんで飯間の電話から？」

「まぁ細かいことは気になさらずに。それで田中さんはどうでした？」

「…」

「まぁいいでしょう。詳しくは帰られてからということで。飯間という人が心配ならば逃げないことです。ではのちほど。」

ツーツーツー。
電話の切れた音が僕の耳からはなれない。

飯間…大丈夫なんだろうか。