教室に戻ると咲樹がすぐに寄ってきた。
「一ノ瀬君いた?」
「…っ」
すぐに答えが言えなかった。あの時のことが咲樹に知られてしまいそうで怖かった。
「…見つからなかったよ」
嘘をついた。今まで咲樹だけには嘘をついたことはなかったのに。
「そっかぁ…帰っちゃったのかな…明日の方がいいかもね」
「…そうだね」
「それより琴葉!お昼まだでしょ?」
「うん」
「パン買っておいたから、食べよ!」
咲樹からメロンパンを渡された。
「…ありがとう」
「うん!てか琴葉、なんか元気なくない?一ノ瀬君のことはしょうがないよ」
「だっ大丈夫だよ!私そんなのずっと気にするタイプじゃないし!」
本当は大丈夫なんかじゃない。なんなんだろう。あの感じ…そう思いながらも私は強がってみせた。