「いた…」
一ノ瀬君、と声をかけようとして、私はためらった。
寝てる…?
足音を立てないように近づくと一ノ瀬君は確かに寝ていた。
その顔を覗いてみる。

ドキッ…


「えっ…?」

ドキッ…

一ノ瀬君を見るとなぜか胸がドキドキした。
長いまつげに、高い鼻。白く透き通った肌。
そして、いつもとは違う無防備さに、胸のドキドキが止まらなかった。

「なにっ…これ…」
私はこれ以上この場にいたらおかしくなると思った。私は足早に桜の木を去った。