「おはよ〜琴葉」
遅刻ギリギリに私の親友、十束咲樹が教室に入ってきた。
「遅いよ、咲樹〜もう少しで遅刻だよ」
「いやぁ〜ゴメンゴメン!髪セットしてたら遅れてさー」
咲樹は私の反対で、女子が好みそうな話が大好きだ。もちろん、恋愛だって大好き。じゃあなんで親友なのかというと、
「ねぇねぇ、今日もいいかな…?」
「はいはい、わかってますよー」
「ホント!?さっすが琴葉〜!」
咲樹は一ノ瀬君のことが好きだ。そして、私はその一ノ瀬君と席が隣。つまり、私と話すという都合をつけて一ノ瀬君と話しているわけ。仲良くなったのはそれだけじゃなくて、一緒のバスケ部だとか、結構話が合うからであって、決して一ノ瀬君だけで仲がいいわけじゃない。

朝のホームルームが終って、また一ノ瀬君の周りには女子が集まり出した。
「一ノ瀬君、今日一緒にお昼食べない?」
「一ノ瀬君、メアド交換しよー」
「一ノ瀬君、日曜日暇かな?」
あーあ、そんなに一気に話しかけたら…
「マジうざいんだけど。頼むから静かにしてくれ。」
ほら言われた。一ノ瀬君は見た目は非の打ち所がない完璧なイケメン。だが、中身は自分の思ったことははっきり言ってしまう、悪い性格だった。
「…ごめんね?じゃあまた今度ね!」
一ノ瀬君の周りに集まった女子達は次々と散らばっていった。
でも、咲樹だけは残っていた。
「一ノ瀬君!昨日のテレビ見た?」
「…あぁ、見たよ」
「すっごく面白かったよねー!」
咲樹は他の女子のように自分の願望をズバズバ言うのではなく、たわいもない会話をする。もちろん、私をまぜて。
そのおかげかなんとか追い払われなくてすんでいる。
「でさー!そのあと…」
「あのさ…」
咲樹の声が一ノ瀬君の声でかき消された。
「なに?」
「アンタのテンション、ついていけない。今まで他の女子とは少し違うかなと思って話してたけど、やっぱおんなじだわ。うざい。もう話しかけんな」
「…え?」
びっくりした。今まで普通に話してたかと思ったら、そんな風に咲樹を思っていたなんて。