それが何か直ぐに分かった。


――ナイフだ。


少しでも顔を動かせば、首に切り傷が出来るであろう事は容易に想像が出来た。


だから、私は目の前で私を睨み付けている男から目線を逸らせなかった。


「お前は誰だ?」


男の低い声が響く。


「アラステアの追っての者か?」


アラステアの追って?


まるで何処かの漫画や映画やゲームの中、もしくは昔の時代劇に出てくる台詞の様。


知らないと言いたかったけれど、ナイフが気になって口を開けない。