今からちょうど2年前、あたしが仕事を始めて間がない頃。


結婚を前提に付き合っているのに、あたしは隆治の家に泊まることを一切許されなかった。


婚前旅行なんてもってのほかだし、隆治が泊まりに来ても、絶対別々の部屋に寝かされていた。


おばあちゃんの時代はそれが当然だったんだろうけど、あたしと隆治には酷な話だった。


あたし達は仕事の休みが全く合わず、ゆっくりデートも出来なくなっていた。


欲求不満になった隆治が思い付いたこと。


それは…。


八神酒店の復活だった。


ーと言っても、販売するのはお酒ではなく、パンなのだけど…。


隆治はまず、パンの仕込みをするため、自宅のキッチンを改修した。


飲食店の営業許可を取れるように手を加え、業務用のオーブンを買った。


もともと店舗だったので、商品を置く棚などは再利用したり、壁は明るく塗り替えたりした。


ここまでの作業を、隆治は仕事をしながら、休みの日にほとんど一人でやっていた。