パン屋のご主人は、まだ入院しているそうで。


隆治は未だに話せていないと言っていた。


一体いつになったら、隆治はラクになれるのかな。


隆治…。


隆治のいない島に帰ったって。


あたし、全然元気になれないよ。


早く元気にならなきゃ、会いに行けないのに…。


時々ね、お腹がシクシクと痛むの。


これじゃあ、ますます悪くなってしまいそう。


思わず、はぁとため息をついた。


昼下がりのこの時間。


縁側で日なたぼっこをするのが、最近の日課になっていた。


特に何をするでもなく、ボーッと海を見て、ただ波の音を聴いていた。


その時だった。


坂の下の道路で、車が停車する音が聞こえた。


バタンとドアの閉まる音がしたかと思うと、今度はザッザッという靴音が近づいて来た。


あ、誰か来る。


お客さんかな?


そう思いつつ坂の方を見つめていると。


「え…?」


うそ…。


坂から顔を出したのは。


会いたくて。


恋しくて。


もうどうしようもなかった



あの隆治だった。