「俺、そろそろ行くよ」


「えっ?もう行っちゃうの?

お昼ご飯食べて、杏ちゃんにも会ってから行けばいいのに」


「うーん。そうしたい気持ちはあるんだけど。

他にもやること、山ほどあってさ…。

島に行く前に、会っておきたい人も大勢いるし…」


「そんな…。

なんだか寂しいわ」


シュンとする母親。


俺はふぅと息を吐いた。


「またいつでも会えるよ」


「いつでもって…、そんなの、いつになることやら」


「お母さんも、島に遊びに来ればいい」


母親がえっ?と目を見開く。


「誰にも、何の遠慮もいらない。

俺がいるんだから。

それに、すずにも会って欲しいし」


俺がそう言うと、母親の表情がパーッと明るくなった。


「そうね。私も会いたいわ。

行く!私も島に行くわ!

おじいちゃんのお墓参りにも行かなくちゃ」


俺はうんと大きく頷いた。


そうだよ。


堂々と来ればいい。


島はお母さんのふるさとなんだから。


「あ、そうだ。お母さん。

ひとつだけ、どうしても頼みたいことがあるだけど」


俺の言葉に、母親が目をパチクリさせる。


「なあに…?」


俺はにっこり笑った。


「あのさ……」