「いいのよ。そんなこと、なんでもない。

隆治が初めて、本音を話してくれたんだもの…。

つらい思いを、打ち明けてくれたんだもの。

それが嬉しくて、どうしても力になりたかったの…。

今まで何もしてあげられなかったから。

隆治が幸せになれるならって思って、つい病院に足が向いてしまったのよ」


母親はそう言うと、にっこりと微笑んだ。


「マジで嬉しかった。

アンタが行ってくれてなかったら、千春さんや奥さんがどういう動きをしていたかわからないし。

アンタが行って師匠に話をしてくれていたから、お互い納得して辞めることが出来たんだ。

これ以上嬉しいことはないよ…」


「そう…。

隆治の役に立てたのなら、本当に良かったわ」


母親って、本当はこんな感じなのかな?


子供のためなら、なりふり構わず動いてしまうのかな?


今思えば、奥さんの行動も。


千春さんを愛するが故だったんだろうな…。


「なぁ…」


「なあに?」


俺はゆっくり息を吸って吐くと、母親の目を真っ直ぐに見つめた。


「ありがとう…」


「ん?」